草間彌生展「わが永遠の魂」

草間彌生展「わが永遠の魂」

草間彌生さんの、過去最大級という個展。最終日の5月22日になんとか”すべりこ見”!

開催期間中、国立新美術館のtwitterでは連日の混みようが流れておりまして、最終日なんてどれだけたくさんの来場者なのか、、、ゲーッソリしちゃうかも危惧していたのですが。
いやいやむしろその大勢の方達と一緒に、ある種の異空間フェスに来たような、そしてちょっと小トリップを体験したような、、そんな高揚感があるひと時を味わえました。
普通の展覧会ではまずない空気感です。
(最終的な来場者数は3ヶ月で520,320人とのこと。桁違いとはこのことでしょうか。)

会場エントランスには富士山を大きく描いた大作《生命は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時》が掲げられ、その横にはさりげなくご本人の挨拶文が。

私は毎日朝から晩まで芸術の制作に命がけで闘っています。
私の心の限り、命の限り、真剣に作り続けたこれらの我が最愛の
作品群を私の命の尽きた後も人々が永遠に私の芸術を見ていただき、
私の心を受け継いでいって欲しい。…

『芸術家としての生きる心構え』が私の一生を支えてきました。
” 芸術の創造は孤高の営みだ ”…

私は死ぬまで闘い続けたい。…

以上は抜粋ですが、すでにここで固まっている人、多数です。

この文章からひしひしと伝わってくるのは、草間彌生は今も、この瞬間も闘っている芸術家なのだということ。

そう、命をかけて生み出された芸術は、見る方も覚悟をしないといけないのだ!
そんなことを思い出させてくれます。

そして《わが永遠の魂》の大部屋へ。

ドドンと抜けた長方形の部屋。
四方の壁には、正方形のカンヴァスにアクリック(アクリル絵の具)で描かれた絵画群《わが永遠の魂》
2009年に着手されて現在も描き続けられている連作です。500点に及ぶシリーズから132点が壁一面を埋め尽くしています。

中央には飲み込まれそうに大きな花のオブジェたち。
圧巻。圧倒。あっという間に飲み込まれてしまう色鮮やかな世界です。

この部屋は撮影可能なので、鑑賞者はお気に入りの作品や、会場全体、自撮りなどなど自由に撮影できました。
展覧会の<はじまり>と<おわり>であるこの部屋は、展覧会の熱気を一気に引き受ける、一種のパーティー会場のような熱気ある空間でした。

1枚ずつ付けられたタイトルには、生や死、戦争と平和、天国や恋などの言葉がよく見受けられました。
ひとつひとつの作品だけど、並ぶことによって続いて見えるものがあったり、ぐるりと見ていくうちにあたたかな宇宙空間にいるような気持ちになります。
(特設ページで作品の一部が見られます http://kusama2017.jp/tamashii/ )


わたくしが好きだと思った1枚。《わが永遠の魂 「わたしの好きな黄色」》©YAYOI KUSAMA

大広間の後は、初期作品から年代順に草間彌生作品を見ていける仕組み。

<構成>
1:21世紀の草間彌生(1)
2:初期作品
3:ニューヨーク時代 1957-73
4:21世紀の草間彌生(2)
5:帰国後の作品 1970-2000
展示場外:展示室外の展示

草間彌生作品の最大の特徴とも言える「水玉」は、彼女が幼い頃に見始めた幻覚によるものだというのは有名な話(統合失調症からくる幻覚と幻聴などの症状とのこと)。
10代の頃から描き始めた絵画に、すでに水玉が表れています。
現在の原色のイメージから程遠い、暗い色調の多い時代です。

そしてニューヨークに渡った後の作品たち。
中心も際限もないモノクロームのネット・ペインティングや、空間を埋め尽くすオブジェやイメージ、ハプニング(パフォーマンス)映像の紹介など、
多彩な手法で、衝撃的ともいえる作品が次々とあわられます。
ポップでかわいいカボチャなイメージがあった人は、かなり衝撃的だったんじゃなかろうか。

再び最近の作品を通過して、体調を崩して日本に帰国した後の作品の系譜をたどります。

《生命の輝きに満ちて》(2011年)は、中心のない反復される世界に鑑賞者が突入するというもの。
無限の鏡の間に、キラメク宇宙のような空間に溶け込んだ自分はどれが本物なのか…「自己消滅」を体感しているようです。


南瓜の内部。穴が空いてました。

前衛芸術家として、すでに有名すぎる草間さんですが、あまりに強烈なあの水玉、そして南瓜のイメージが先行していたため、まとめて作品を見たのは実は初めてでした。
生と死の狭間で、病や厳しい現実に振り回されながらも、芸術家として今なお挑んでおられるそのエネルギー。
ぐるりとひとめぐりする形で作品世界を体感できる構成がまたよく、みんなで同じ夢を見たような…あるいは(誤解を恐れず書くと)ものすごい壮大なエンターテインメントに浸ったような、爽快な気分になりました。

会場の外にも撮影可能なスポットがあって、みんななんだか楽しそう。
一見ポップな水玉に誘われて、いつの間にか草間作品の永遠の宇宙に引き込まれてしまったみたいだった。


シールをもらい、水玉ルームで「自己消滅」

▪️概要
国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂
会期:2017年2月22日(水)- 5月22日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E【東京・六本木】
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
公式サイト: http://kusama2017.jp

☆巡回展はありません

が、

夏に京都の二条城にて行われる「アジア回廊 現代美術展」に草間彌生さん他25組が参加する予定だそう!
会期:2017年8月19日〜10月15日
会場:二条城、京都芸術センター
住所:京都府京都市中京区二条城町541(二条城)、京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2(京都芸術センター)
URL: http://www.asiacorridor.org